| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-239

琉球列島におけるカエルツボカビの分布実態とその感染力

*富永篤,五箇公一,鈴木一隆(国立環境研),田向健一(田園調布動物病院),宇根有美(麻布大・獣医・病理)

琉球列島には21種もの在来両生類が生息しており、その種数は日本産全種の1/3以上を占め、うち18種が固有種である。こうした多くの両生類の生息地である琉球列島からカエルツボカビ(Bd)が検出され、その影響が懸念されている。先行して演者らが実施した全国調査において、琉球列島の両生類の中でも特にシリケンイモリ(シリケン)が高い感染率を示したことから、本研究ではシリケンを対象にBdの時空間的分布変動を調べた。その結果、琉球列島の中でも沖縄諸島の個体群でBd感染率が高いこと、特に沖縄島では全域からBdが見つかること、それに対して奄美諸島の個体群の感染率は低いこと、などの地理的分布変異が確認された。さらに季節変動として春-夏季(3-6月)に感染率が上昇し、秋季(9-11月)に感染率に低下する周期性が示唆された。一般に、Bdは高温に弱く、感染率は環境温度と負の相関を示すとされるが、シリケンでは温度が低下する11月下旬でも感染率が低かった。次にシリケン由来Bdの感染力を検証するために、Bdを保菌したシリケンと南米原産のベルツノガエル(ベルツノ)とを同居させることによる感染実験を行った。その結果、実験開始後10日目にPCR検査によりBdがベルツノ皮膚から検出され、18日目にはベルツノ脱皮片にBdの遊走子嚢が観察され、ツボカビ症の発症が確認された。Bdに感染したベルツノは、非感染(コントロール)のベルツノに比べて有意に成長が遅く、Bdが両生類の成長を阻害することが明らかとなった。しかし、両群とも実験開始後130日目まで摂食行動に変化なく、生存し続け、Bdはベルツノに対して急性致死的効果をもたらさないことが示され、Bdによる両生類の減少はその他の環境要因と複合的影響により起きている可能性が示された。


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