| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-241

河川環境と淡水性在来・外来ウズムシ類の分布の関係 -淀川水系における市民参加型調査の結果から-

岡出朋子, 石田 惣*, 中条武司(大阪市立自然史博), 中口 譲(近畿大), 淀川水系調査グループ「プロジェクトY」プラナリア班, 同水質班

淡水性ウズムシ類(扁形動物門渦虫綱三岐腸目)のうち、在来種の多くは良好な水質を要求するとされる。しかし、具体的な要求環境を野外で定量解析した例はほとんどない。一方で河川では環境改変が増大し、ウズムシ類の外来種も侵入している。ウズムシ類の要求環境を知ることはその基礎的な生態を知るとともに、保全策を探るためにも重要である。本研究では淀川水系でウズムシ類の分布と水質を調査し、分布の有無を説明する環境要因を探った。

方法:淀川水系(桂川・宇治川・木津川の三川合流より下流および流入河川)に調査地点を設定し、ウズムシ類の生息の有無と水質分析を行い、分布を説明する環境要因を解析した。調査は市民参加型の調査プロジェクトの一つとして行った。

結果:生息地点数の多かったナミウズムシ(以下ナミ)とアメリカナミウズムシ(以下アメナミ)について解析したところ、ナミの出現確率は富栄養源イオン(窒素、リン等)、生活排水由来のイオン(塩化物イオン等)の各濃度、水温、及び周辺の住宅地・工場の存在と負の相関が、溶存態ケイ素濃度及び底質のレキの存在と正の相関があった。アメナミの出現確率は溶存態ケイ素濃度と負の相関が、水温及び住宅地・工場の存在と正の相関があるのみだった。

考察:ナミは低水温を要求し、水質汚染物質への耐性が低いとみられ、生息場所となるレキも生息条件として重要とみられる。アメナミは水質汚染物質に対する耐性が高いとみられ、低水温には耐えられない可能性が考えられる。水温の上昇や周辺の開発は在来種の分布域の縮小につながるかもしれない。


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