| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-242
外来アリ類のいくつかの種はアブラムシ類やカイガラムシ類などの甘露排出昆虫と強い相利共生関係を結び、それらの個体数を著しく増大させることで在来植生や農林業に対して間接的に大きな被害を与えていることが国外の熱帯・亜熱帯の島嶼地域から報告されている。
演者らはわが国の保全上特に重要な沖縄本島のヤンバル地域に侵入している外来アリ類が、現地の甘露排出者へどのような影響を与えているかを明らかにする目的で、どのような外来アリがどのような甘露排出者を利用しているのか、外来アリ類と甘露排出者の現存量の間に相関関係は認められるのかどうか、また外来アリが甘露排出昆虫の生存に対し国外で報告されているような正の影響を与えているのか−をヤンバルにおいて外来アリ類の侵入が特に著しい林道周辺の環境において調査した。
その結果ヤンバルの林道周辺環境では (1)アシナガキアリ、ツヤオオズアリ、アシジロヒラフシアリの3種の外来アリが発生している甘露排泄者をほぼ独占的に利用していること、(2)甘露排出者の現存量はこの3種の外来アリ類の現存量と強く相関するが、その相関する外来アリ種の種類は甘露排泄者の種によって異なること、(3)この3種の外来アリ種は少なくとも一部の甘露排泄者の生存には明らかな正の影響を与えていること−が明らかになった。
以上の結果より、ヤンバルの林道周辺の環境では上記3種の外来アリが甘露排泄者の多発を招き、甘露排泄者の群集構造を大きく変化させている可能性が強く示唆された。しかしその影響は外来アリの種とそこに生存する甘露排出者の種類によって変化している可能性があるということも示唆された。