| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-243

帰化植物イヌケホシダの分布拡大と普通種化,その生育地の特性

*村上健太郎(きしわだ自然資料館),堀川真弘(森林総研),森本幸裕(京都大・地球環),松井理恵((株)パシフィックコンサルタンツ)

研究目的:イヌケホシダ(Thelypteris dentata (Forssk.) E.P.St.John)は本州では1950年代に初確認された亜熱帯性の帰化植物であり,当初,稀少な種として扱われていたが,近年,急激な分布拡大を示している種である。本研究では,この植物の分布拡大過程を整理し,GISによって予測された潜在的な分布可能域と実際の分布域が一致するかどうかを調査した。また,その生育地の特性について調査した。

結果:イヌケホシダは現在,近畿地方,中国地方,中部地方南部の海岸に近い平野部の都市域(イヌケホシダの移入の初期に,分布が確認されていた地域)にきわめて普通に見られる種となっていることが明らかになり,その分布域は予測された分布可能域のほぼ全域に拡大していることが明らかになった。現在のところ北限は千葉県匝瑳市であり,日本海側にも分布していることが分かった。また,イヌケホシダの生育地は,人工水路の内壁および石垣などが多く,ヒメツルソバ,オニタビラコ,ホウライシダなどとともに生育していることが分かった。

考察:イヌケホシダは,1980年代前半までに最初に発見された和歌山県全域で確認される種となり,その後約30年で,潜在的生育可能域全域まで分布拡大し,本州南岸部のほぼ全域に広がった。その分布拡大速度は計算方法によって異なるが,4.2 km/年〜7.8 km/年であった。イヌケホシダは,既往研究からも,石垣などを好むことが知られていたが,本研究でもそれが再確認され,西日本の都市部のごく普通種になっていた。また,別の既往研究では,季節に関係なく葉を展開させ,胞子を散布させる雑草的な性質が確認されており,今後も都市部を中心に,分布域をより拡大させる可能性が高い。


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