| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-250
攪乱跡地において,外来キク科多年草のオオアワダチソウ(Sg)は,在来イネ科多年草のススキ(Ms)やヨシ(Pa)よりしばしば速く侵入優占する.外来植物による優占は,リター分解速度に影響を与える.リター分解速度は,リターの質(化学的,物理的特性)に影響される.他方,異なる種により優占された植生間では分解者群集や微気象が異なるため,リター分解速度が異なることもある.これらの要因はリター分解速度にどのような影響を与えているのだろうか?
調査は北大苫小牧研究林と石狩川下流河川敷で行われた.苫小牧ではSgとMsの,石狩ではSgとPaの茎部リターの分解を測定した.リターバッグ法を用い,Sg,Ms,Paが優占した植生で,Sg,Ms,Paのリター分解を比較した(2008年6月−09年7月).バッグ回収後,バッグ内のリターの乾燥重量と分解者の量を測定した.リターの質の指標として,Sg,Ms,Paのリターの炭素量と窒素量の比(C/N比)を測定した(08年6月).また,各植生でセルロース分解速度(08年8−10月)と表土のC/N比(08年9月)を測定した.
全ての植生において,Sgのリター分解速度はMs,Paのリターよりも速かった.また,3種のリター分解速度はSgに優占された植生でわずかに速かった.トビムシや腐朽菌などの分解者は,MsとPaのリター内よりSgのリター内に多かった.SgのリターのC/N比はMsとPaより低く,分解者にとってSgのリターの方がより利用されやすいことを示した.セルロース分解速度と表土のC/N比は植生間で異なった.
以上より,Sgのリター分解は,植生よりもリターの質により影響されることがわかった.MsとPaよりSgのリターは分解者に利用され,速く分解するため,侵入後の土壌養分循環を加速する可能性が示された.