| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-253

水草タイプによるアメリカザリガニからヤゴへの捕食圧軽減効果

佐藤允昭(東京大・農)

アメリカザリガニ(Procambarus clarkii)は淡水域における侵略的外来種であり、在来生態系への侵入はアメリカ西部やヨーロッパ、日本など世界各地で報告されている。そして侵入した淡水域ではヤゴなどの在来水棲動物を捕食し、その生態系機能の低下や種多様性の減少をひきおこしている。

このような淡水域の捕食者−被食関係に影響を与えるものとして構造物である水草が挙げられる。水草は水棲昆虫などの隠れ家として利用され、その捕食者からの捕食圧を軽減する効果がある。また、水草の構造が複雑なほど、この効果は高いといわれている。一般的に水草は3つの生活型(沈水植物、浮葉植物、抽水植物)に分けられ、この生活型ごとで水草の構造は大きく異なる。そのため、生活型ごとで複雑さは異なり、捕食圧軽減効果も異なることが予想される。したがって、水草の生活型によるアメリカザリガニから水棲動物への捕食圧軽減効果の違いが明らかになれば、在来水棲動物を保護するうえで重要な知見となりうる。

そこで、本研究ではまず3つの生活型の水草について、水中での構造の複雑性を評価した。その結果、沈水植物>抽水植物>浮葉植物の順となった。次にそれぞれの生活型の水草を用いて、アメリカザリガニからヤゴへの捕食圧軽減効果の違いを実験的に検証した。その結果、沈水植物≒抽水植物>浮葉植物の順となり、複雑さの順位と異なった。これより捕食圧軽減効果は沈水植物、抽水植物とともに浮葉植物よりも大きく、両者とも水棲動物の隠れ家として重要な役割を果たしていることが示唆された。


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