| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-256
本研究では都市緑地におけるアライグマと他中型食肉目の活動場所と活動時間帯を比較し、種間に競合が存在するか検証した。調査地として鎌倉市の住宅地に囲まれた鎌倉広町緑地(48ha)を選定した。調査には自動撮影法と足跡スタンプ板法を用いた。緑地内に自動撮影カメラを42地点、足跡スタンプ板を46地点にそれぞれ設置した。
自動撮影調査(5,602CN)では6種の哺乳類が確認され、中型食肉目の100CNあたりの撮影頻度はアライグマ19.9回、タヌキ30.0回、ハクビシン6.7回、ネコ13.5回だった。足跡スタンプ板調査(2,668TN)では6種の哺乳類が確認され、中型食肉目の100TNあたりの出現頻度はアライグマ3.3回、タヌキ4.6回、ハクビシン0.7回、ネコ5.5回だった。両手法による中型食肉目の相対的な撮影頻度は、ネコを除いて類似した。設置地点ごとの撮影頻度の関係をみると、アライグマが多く出現する場所はタヌキとネコも多く出現した。活動時間帯をみるとアライグマとハクビシンは夜行性を示した。タヌキは主にアライグマと重複した時間帯に活動したが、総撮影枚数の24%は日中に撮影された。ネコは24時間を通して撮影された。神奈川県の都市域や農村域で行われた既報の自動撮影調査(10カ所)から得られた100CNあたりの撮影頻度の中央値はアライグマで1.0(R=0-97.9)回、タヌキ25.0(4.0-30.0)回、ハクビシン3.7(1.2-6.7)回、ネコ13.5(0-38.8)回であった。
このことから本調査地はアライグマの密度が高いにもかかわらず、他の中型食肉目は平均的な密度であるといえる。すなわち、広町緑地において野生中型食肉目は活動場所と活動時間帯を重複させていたが、競合の影響はみられなかった。