| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-259
特定外来生物アルゼンチンアリLinepithema humileの防除にあたっては、殺虫剤の活用が有効策の一つと考えられる。しかし、外来生物法では、農薬等の化学薬剤による外来生物防除に関して、明確な基準が設定されておらず、無秩序な薬剤散布による生態系影響が懸念され、さらに防除現場における薬剤使用の大きな障害にもなっている。そこで我々はアルゼンチンアリ防除薬剤の生態リスク評価を実施し、適正な防除指針の作成を目指している。本研究では防除薬剤Fipronil0.005%水和剤による在来アリ類と特定外来生物アルゼンチンアリへの殺虫活性の差を室内毒性試験により調査した。また、Fipronil0.5%粒剤及びHydramethylnon0.9%粒剤による地表徘徊性節足動物への影響を野外実験により調査した。その結果、Fipronilは在来アリ類と比較してアルゼンチンアリに対して非常に高い殺虫活性を有することが示された。このアルゼンチンアリと在来アリ類との薬剤感受性の差から防除薬剤の散布量や散布濃度を調整することで同所的に生息する在来アリ類に対する影響を相対的に低く抑えることができると考えられた。また、ベイト式薬剤を用いた野外実験からは地表徘徊性節足動物への影響が観測され、中でも甲虫目およびワラジムシ目が薬剤の影響を顕著に受けていることが確認された。しかし、生物群集レベルで評価した結果ベイト式薬剤の影響は有意なものとは判断されず、比較的短期間で薬剤の影響は無くなり、周辺環境からの地表徘徊性節足動物の再移入が開始されるものと予測された。