| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-260

外来種ハリネズミのミトコンドリアDNA多型解析

*岡孝夫, 長谷川洋子, 鉄谷龍之, 安藤元一(東農大), 石井信夫(東京女子大), 小川博, 天野卓(東農大)

日本に定着が確認されている外来種ハリネズミ(Erinaceus属)については、種同定や地域間での遺伝的な比較は行なわれていない。そこで本研究では、静岡県伊東市および神奈川県小田原市のハリネズミのミトコンドリアDNA D-loop領域の解析から、種同定および両地域間の比較を行なった。両地域で捕獲された個体から定法にてDNAを抽出し、PCR法にてD-loop領域の前半400bpを増幅、塩基配列を決定した。比較には既報のE. europaeusおよびE. concolorの塩基配列を用いた。その結果、伊東市と小田原市の個体からはそれぞれ1つのハプロタイプのみ認められた(それぞれ伊東型、小田原型とする)。このことから両地域に生息するハリネズミは少数の個体から成立した集団であると考えられた。伊東型と小田原型の間の塩基配列の相違は1.5 %であり、既報のE. europaeusE. concolorにおける種内変異のレベルであった。系統樹において、伊東型、小田原型のハプロタイプは1つのクラスターを形成した。また、伊東‐小田原クラスターは高いブートストラップ値(99‐100 %)でE. europaeusおよびE. concolorのクラスターから分かれる結果となった。伊東‐小田原クラスターとE. europaeusE. concolorクラスター間の平均遺伝距離はE. europaeusクラスターとE. concolorクラスター間の平均遺伝距離と同程度であり、3つのクラスター間には種レベルの遺伝的差異があるものと考えられた。よって両地域のハリネズミはハリネズミ属のもう1種であるE. amurensisであると推察された。


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