| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-263
外来種の分布拡大を推測することは、外来種の個体群管理を行ううえで有効であることに加えて、種の分布拡大についての基礎的な知見を得ることが出来ると考えられる。北海道に侵入してきたトノサマガエル(Rana nigromaculata)個体群が北海道石狩管内にて分布を広げている。2006年から2009年にトノサマガエルの分布域を調査し、1997年に行われたトノサマガエルの分布についての先行研究と比較したところ、1997年においては1.7 km2であった分布域が2006年では27.1 km2となり、過去9年の間におよそ13倍にその分布域を広げていた。分布域は調査地域内を流れる千歳川の下流方向へもっとも大きく広がっていたが(1.1km/yr)、一方で千歳川を垂直方向に横切る方向への分布は拡大傾向にあるものの、下流方向への拡大速度と比べると低かった(0.3km/yr)。また、住宅域に隣接していた分布域は水田の放棄などに伴うハビタットの減少のため分布域が縮小していた(-0.2km/yr)。本研究の結果は、千歳川の流れがトノサマガエルの分布拡大を促進している一方で、河川を垂直に横切る方向へは障壁となることが示唆される。また、調査域内ではトノサマガエルの個体数が増加するにつれ、在来種であるニホンアマガエルの個体数が減少することも報告されており、トノサマガエルの分布拡大は道内のニホンアマガエル個体群に負の影響を与えることが考えられる。