| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-265

手賀沼流域におけるナガエツルノゲイトウの10年間の分布拡大と灌漑用水路の関係

*齋藤康宏,富田瑞樹(東京情報大),林紀男(千葉中央博),原慶太郎(東京情報大)

千葉県の手賀沼流域では,特定外来生物ナガエツルノゲイトウが1998年に初めて確認されてから,流域全体に分布が拡大し続けている(林ほか 2009).林ら(2009)は,流域全体への分布拡大の要因として1960年代の土地改良によって築かれた灌漑用水路の影響を示唆しているが,その検証はなされていない.本研究では,手賀沼流域における10年にわたるナガエツルノゲイトウの分布の変遷と灌漑用水路の関係を明らかにすることを目的とした.特に,流域を巡る河川と灌漑用水路が織り成すネットワークに着目し,それぞれの流向も鑑みてナガエツルノゲイトウの移動距離や経路等について解析した.

手賀沼流域(163.4km2)における1997年から2007年までのナガエツルノゲイトウの生育地点記録結果(林ほか 2009)に,ArcGISを用いて経緯度情報を与えた.河川ならびに灌漑用水路のネットワークを構築するために,手賀沼土地改良区から入手した土地改良事業概要図(1/25000)および区画整理確定図(1/3000)を用いて揚水機場の位置と灌漑用水路を電子化し,数値地図2500からは内水面データを用いて,流向を鑑みたネットワークを構築した.ネットワーク上における生育地点間距離や移動経路等について解析した.

1998年に,流域東部の用水路でナガエツルノゲイトウが初めて確認された.流域東部の用水路において分布の拡大・消失を繰り返しつつ,2002年には流域東部の主要河川へ侵入した.主要河川への侵入に起因するようにして,流域東部に限定されていた分布が2005年には上流域である流域西部に拡大し,最終的には流域全体の河川・用水路に分布が拡大した.移動経路を探索した結果,下流域から上流域への侵入には灌漑用水路が影響していることが強く示唆された.


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