| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-266

ニワウルシの根萌芽を主体とした個体群動態に関する考察

*竹内史郎(日本大・森林資源),永井牧子(日本大・森林資源),鈴木圭(日本大・森林資源)

明治期、わが国に街路樹として導入された、中国原産のニガキ科のニワウルシ(Ailanthus altissima)は、都市公園や高速道路法面、鉄道沿線など、都市近郊の比較的開けた土地でよく目にすることができる。また海外でも旺盛な繁殖力で都市近郊での分布拡大が報告されており、侵略的外来種と認識されている。そのため、わが国でもさらに分布を拡大するのではないかと考え、本種の更新動態を調べた。

神奈川県藤沢市の日本大学藤沢演習林内に48m×33mの調査区を設置し、2008年4月から2009年12月にかけて、林内光環境、全個体分布位置、プロット全域の成長量、プロット内の個体の消長、新規発生個体の消長などの継続観察を行った。

その結果、1.2009年時の総個体数は、2008年時の総個体数より増加していた、2.2009年時の個体分布域は2008年時よりも拡大していた、3.林内光環境と個体群動態に明瞭な関係性は認められなかった、4.個体の分布は森下のIδ指数によれば強い集中分布を示した、5.観察した新規発生個体で最終的に生存していたものは全て根萌芽個体であり、実生由来の生存個体はなかった。

これらの結果から、この調査区の個体群は林内において実生による更新は上手くいっておらず、根萌芽を中心に更新し、個体数を維持、拡大している可能性が高い。


日本生態学会