| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-269

アルゼンチンアリの生態研究

*西村晃治,嶋田正和(東大院・総合文化)

アルゼンチンアリは、IUCNの定めた世界の侵略的外来種ワースト100に入る外来種アリであり、日本においても1993年の広島の廿日市への侵入を皮切りに、主に港湾部を中心に分布が広がっている。アルゼンチンアリの特徴として、闘争せずにコロニーが融合する「スーパーコロニー」といわれる大規模なコロニーをつくることが知られる。新女王は結婚飛行を行わず、元の巣から極めて近くに分巣し、それらの巣間では闘争が行われない。大規模なスーパーコロニーの形成が、アルゼンチンアリの侵入先での在来アリに対して有利に働くと考えられている。

本研究では、アルゼンチンアリのスーパーコロニーと侵入先への定着率との関係性を調べるために、Nakamaru et al.(2007)のコロニーベースの格子モデルを元に、アルゼンチンアリの種内競争の有無が、在来種や、その定着のしやすさに与える影響をシミュレーションで解析する。本モデルでは、格子にアルゼンチンアリと在来アリのコロニーを分布させる。前者は近距離拡散で分巣(大コロニーから増殖開始)し、後者は遠距離拡散、結婚飛行(小コロニーから増殖開始)である。ここまではNakamaruモデルと同じ仮定である。これに、コロニー間の融合/競争を直接的に組み込むため、同一のスーパーコロニー所属のアリが隣り合う格子にいるとき、両コロニーの生存率が上昇するという要素を加えた。スーパーコロニー数の初期値によって、在来アリや、敵対するコロニー等の動態にどのような変化があるかを議論する。


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