| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-335
「生態学」というと、理系大学、理系学部の科目であるように思われる。しかし、生物多様性の喪失が大きな地球環境問題、国際問題の一つとなり、生態系機能や生態系サービスの重要性が認知されるようになってきた昨今では、文系大学、文系学部でも生態学を扱うことのできる一般教養科目が増えてきている。たとえば、演者が勤務する京都外国語大学には、「生物と環境」「自然を知る」「自然を考える」という授業がある。授業名からも窺えるように、生態系のしくみや生物の生態など、マクロの分野に重きが置かれている。
では、文系学生が生態学を学ぶ理由とは何であろうか。彼らは生態学者を志すわけではないし、生態学は彼らの専門分野とかかわりが深い分野でもない。彼らにとって、生態学は一般教養科目の一つに過ぎない。自然や環境問題に興味があるから、といった比較的熱心な理由を持つ学生もいれば、単位稼ぎのために仕方なく受講する学生もいる。しかし、教員の側からすれば、これはまたとない環境教育の機会である。大学全入時代の昨今、文系学生の数は理系学生に引けをとらない。彼らは大学を卒業すれば、さまざまな社会で活躍の場を得る。いずれは子どもを育てる親となる学生も多い。彼らの将来を考えると、一般教養科目を利用して生態学を扱い、自然のしくみや見方を教えることは、一般市民の生態系に対する関心の底上げにつながるのである。
では、専門知識がほとんどない文系学生に、生態学の何をどのように教えればいいのか。これは文系大学、文系学部で生態学を教える教員にとっては永遠のテーマであろう。今回の発表では、演者が過去2年間にわたって行ってきた授業内容や手法を紹介するとともに、学生アンケートの結果から文系学生の生態学教育に対する印象やニーズの分析を試みたい。同じ悩みを抱えている先生方にはぜひ発表を聞いていただき、有意義なコメントをいただきたい。