| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-336

市民中心の湿原再生の取り組み −内海谷湿原7年間の歩み−

*片岡博行(津黒いきもの),西本孝(岡山県自然保護セ),森生枝(岡山県自然保護セ),波田善夫(岡理大・総情)

岡山県と鳥取県の県境に程近い蒜山(ひるぜん)高原に位置する内海谷(うつみだに)湿原は、かつては良好な湿原植生が発達していたが、2002年の岡山県による自然環境保全調査の結果、道路工事による水路変更、集水域の森林の発達等により、湿原全体の乾燥化が進み、湿原植生の衰退が著しいことが明らかとなった。そこで、2004年より、岡山県自然保護センター、同所属ボランティア(以下、センターボランティア)、地元住民(蒜山エコツーリズム推進事業実行委員会・蒜山ガイドクラブ)、鳥取大学フィールドサイエンスセンター等が協力し、湿原再生に取り組むこととなった。

この内海谷湿原の自然再生活動において、事前の植生調査から、草を刈り、堰堤を作り、池を掘り、周辺に遊歩道を作るといった実際の再生活動まで、全体を通じて原動力となったのが、センターボランティア、地元住民などの市民であった。また、近年では市民(蒜山ガイドクラブ)が講師を務める自然観察会も毎年開催されるようになっており、環境教育の面からも成果が上がりつつある。6年間にわたる再生活動において市民の継続した参加が得られた理由としては、岡山県自然保護センターでの湿原の管理経験があったこと、岡山県内の湿原調査により湿原の悪化の現状を認識できたこと、内海谷湿原で保全活動を体験する研修会の開催により市民の湿原保全に対する意識を啓発し続けたことなどが挙げられる。

本発表では、2004年から2009年までの6年間にわたる内海谷湿原の自然再生活動を、市民活動としての観点より整理し、これまでの活動の詳細および今後の活動継続のための課題を含めて報告する。


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