| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-337

行政支援によるため池−里山複合生態系保全に関する住民意識の改革.2

*東 敬義(三重県埋蔵文化財センター), 阿藤正樹(三重県津農林水産商工環境事務所)

全国で約21万箇所のため池が農業用水源として使用されており、それらは洪水調節機能や地域住民の親水空間、野生動植物の生息場所などの多面的機能を有すると考えられている。しかし、近年、農業従事者の減少や高齢化により、ため池の維持管理が困難になり、多面的機能の維持が危ぶまれている。そこで、農林水産省は、利水者や自治体がため池の決壊防止や水利用・洪水調整のため、最小限の堤体改修を行ない、複数のため池を水路で連結して相互に利用し、多面的機能の発揮を支援する「ため池群広域防災機能増進モデル事業」を策定した。この事業では、防災や渇水対策に加えて、生態系保全構想及び親水空間の創造等の計画を立てることとなっている。このうち、三重県では、伊勢平野に位置する津市片田田中地区において、「ため池群広域防災機能増進モデル事業」が採択された(2004〜2008年度)。本事業では、「多面的機能」発揮計画において、対象地域の生物調査と学校教育「総合的な学習の時間」を利用した啓発活動を行なうことになり、2004〜2005年度に、本事業地域に生息する動植物の種類や分布、地質等を調査した。この結果をまとめ、2006年度から地元小学校と協力し、総合的な学習の時間「自然調べ」を開催した。授業では、「植物」、「昆虫類」、「魚類・両生類・は虫類」、「鳥類」、「地質」の学習班に別れ、野外で観察を行なった。その結果、児童はため池とその周辺に、多数の種類の動植物が生息していることを知り、地域の自然の大切さを認識したようである。これらの学習成果は、毎年、校内で学習発表会を開催し、保護者や地域住民の前で発表している。ここでは、その事例を報告するとともに、児童・保護者・教員に対するアンケート結果による当該事業の効果や問題点、事業終了後の課題等を考察した。


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