| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
シンポジウム S05-2
外来種の駆除や在来種の復元を実施する上で、国民の協力体制は、プロジェクトの成功の可否を握る大きな鍵となる。実際、ニュージーランドやイギリスでは、侵略的外来種の駆除を行う際、対象生物やその管理方法に対して人々がどれだけ関心を持っているかに応じて国民の協力体制が決まったという報告がある。しかしながら、我が国では、これまで、外来・在来動植物に対する人々の選好を広域スケールで調べた研究は皆無である。
日本全国の20代から60代の男女約800人ずつを対象として、外来もしくは在来動植物に対する人々の駆除(外来種)もしくは保全(在来種)の意識を調査した。その結果、在来種よりも外来種において、生物の保全・管理に対する人々の意識に、分類群に応じて大きなばらつきが認められた。次に、人々の意識・選好と個人属性(性別、年代、職業、収入、経験など)との関係について紹介する。また、外来種においても在来種においても、実際にその生物を見たことがあるかどうかよりも、テレビや新聞で見聞きしたことがあるかどうかのほうが、対象生物に対する保全・管理意識の強さと高い正の相関を示したことから、国民の意識を決定する上でマスコミの影響力が大きいことが示唆された。日本では、2009年までに生物多様性地域戦略(もしくはそれに類する戦略)を策定した都道府県が6県(埼玉県、千葉県、兵庫県、滋賀県、香川県、長崎県)あり、これら環境先進県では生態系管理に対する住民の意識が他の都道府県と比べて高いことが想定される。時間が許せば、環境先進県の一つである兵庫県と日本全国を比較し、外来種駆除や在来種保護に対する意識が環境先進県において特別に高いかどうかについても触れる。