| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
シンポジウム S05-3
環境経済学の分野では、環境政策を効率性の観点から評価する取り組みが行われている。そのための手段として、ある政策を実施するための費用と便益を比較する「費用便益分析」が用いられることが多いが、生態系保全政策の費用便益分析を行うためには、生態系保全の便益を貨幣単位で評価することが必要となる。
生態系保全の便益とは、保全される生態系の価値に他ならない。経済学では財の価値は支払意思額、すなわち、「その財を手に入れるために最大限支払ってもいいと思う金額」で計測する。したがって、生態系の価値は、生態系保全に対する人々の支払意思額(を集計したもの)と考えられる。
そこで、これまでに経済学の分野では、生態系保全に対する支払意思額を評価するための様々な手法が開発されてきた。なかでも近年は、アンケートを用いて直接人々に支払意思額を尋ねる「表明選好法」に関する研究が多数行われており、洗練化が進んでいる。表明選好法を用いれば、その生態系を次世代に残すことから得られる満足である「遺贈価値」や、その生態系が存在するという事実そのものから得られる満足である「存在価値」などの「受動的利用価値(非利用価値)」も評価することが可能となる。
本報告ではこれまでに開発されている代表的な評価手法を紹介するとともに、表明選好法の一種である「コンジョイント分析」により、水辺の外来種管理に対する支払意思額を評価した事例を報告する。