| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S09-2

造礁サンゴにおける環境応答解析と群集の緯度変異

中村崇(九州大・理)

近年、温暖化に伴う造礁サンゴ(以下サンゴと記す)の分布域変化が示唆されている。日本のサンゴ群集は、世界的に見ても比較的高緯度域に存在している。そのため、生息するサンゴ種数は、亜熱帯から温帯域へ北上するに従って減少傾向を示す。例えば、熱帯から亜熱帯の浅海に優占的に見られるコユビミドリイシAcropora digitiferaの分布域は、九州本土以南となっている。各海域における水温の違いが分布の制限要因として考えられており、日本沿岸域での水温上昇に伴って分布域が変化することが予想されている。しかし、温暖化影響の考察に有用な、生息環境の閾値等に関する、生理学的基礎情報はいまだ十分とはいえない。そこで、温度や日照に特徴付けられる環境の変動に対して、サンゴ群体の成長・共生藻の光合成が示す動的応答の変化を明らかすることで、生息環境閾値の見積もりを試みた例を紹介しつつ、今後、サンゴ種間・群集間における環境応答比較と群集動態調査により、将来のサンゴ群集への温暖化インパクト予測に重要な基礎的知見を提供できる可能性について論ずる。


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