| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
シンポジウム S10-2
今年10月のCOP10開催を受け、数年前から企業の間でも生物多様性の保全に対する関心が急速に高まりつつある。しかしもちろん、COP10があるからではなく、そもそも企業活動が生物多様性に密接な関わりがあるからこそ、保全に取り組まなければならないのである。
その関係性とは、多くの企業活動が生物多様性に大きな負の影響を与えているということもあるが、実はそれ以前に、企業活動はいわゆる生態系サービス、生物資源の供給や生態系の各種機能、に依存していることが大きい。すなわち、生物多様性が劣化、消失することは、企業にとっても大きな不利益となるのである。
こうした背景を理解した企業は、自主的に生物多様性の保全への取り組みを開始している。そうした企業の集まりの一つが「企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)」であ。2008年の4月のスタート時には14社の会員が、2010年1月には38社となっている。
主な活動内容としては、生物多様性の保全のために企業は何をすべきか、またそのためにどのような手段があるのかというようなことを共同で調べたり、適当な手段がない場合には自分たちで開発している。主な活動結果として、製品やサービスのライフサイクル全体にわたって生物多様性に対する依存と影響を可視化する手段である「関係性マップ」の開発などがある。
また、生物多様性の保全活動として、社会貢献的な活動だけを行う企業も多いが、JBIBでは本業との関係性を意識し、事業が与える影響を削減する活動を広げようと努力している。今後は、こうした活動の目標と進捗をいかに定量化し、日々のマネジメントに落とし込むかが課題となっている。