| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S11-6

深泥池における外来魚の管理

安部倉完(京大理学研究科)・竹門康弘(京都大学防災研究所)

2005年より外来生物法が施行され、在来生物群集の復元を目的とした外来生物除去が各地で行われるようになった。しかし、外来魚の個体群動態に基づいた抑制手法の確立は十分とはいえない。 京都市深泥池(面積約9ha,周囲約1km)は、北方系と南方系の多様な動植物が共存するため天然記念物に指定されているが、外来魚の侵入によってその生物群集は大きく変わってしまった。このため、深泥池では1998年からブーギルとオオクチバスを対象とした外来魚対策事業を実施している。

我々は、これまでブルーギルの除去努力量と個体群抑制との関係について、密度効果を加味した個体群動態モデルを用いて、捕獲努力量を調節 することにより、順応的な外来魚の個体群抑制の対策を継続してきた。その結果、1998年に9,545尾だったブルーギル個体数は,2007年490尾、2008年には143 尾まで減少した。しかし、2009年は972尾に個体数が増加した。2008年は産卵床の破壊数は23個から56個に増加しており、そのため、破壊しそこなった産卵床が増え、新規加入を抑制できなかったと考えられる。これまで繁殖年齢は4歳魚以上であったが、2008年は、多くの3歳魚が繁殖に参加していたことが確認された。

本研究では、繁殖年齢の低下を考慮した個体数変動と絶滅確率を個体群動態モデルを使って検討した。シミュレーションの結果、繁殖年齢は4歳魚以上、2008年レベルの駆除努力を継続すると過程した場合、2012年の個体数予測値は100尾以下となり、2017年には 50%以上、2037年には 90%以上の確率で根絶が可能となると推定された。また、個体数が200尾以下になった時には3歳魚も繁殖に参加すると仮定した場合、2022年に300尾以下となり2036年には25%の確率で根絶が可能と予測された。


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