| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
シンポジウム S17-1
トキの営巣環境,採餌環境,生態情報といった自然環境,さらには,社会的合意形成を設計するための社会環境の両面に適合した持続的な自然再生計画を立案し,それを地域に定着させることを目的に「トキ再生プロジェクト」が実施されている。このプロジェクトを円滑に実施するためには,関連する情報を利活用することが鍵となる。しかしながら,自然・社会環境に関する情報は,多種多様であり,これらを利用する研究者,地域住民なども様々であるため,関係する情報,研究成果を統合し情報を機能的に利活用,共有される環境を整備することが重要となる。
そこで,多種多様な情報を位置情報をキーとした地理空間情報として管理・集約するデータベースとそのデータベース構築を支援するGISとWikiを用いたポータルサイト「トキGIS」からなるGIS情報基盤を構築し,情報を共有・流通させる仕組みを創出した。
このGIS情報基盤では,プロジェクト内の各研究グループが保有する各種情報の相互関係性を情報マトリックスにより視覚的に管理し,調査・研究情報を収集する仕組みを作るとともに,収集された情報を用いてGISの空間解析機能を用いた分析及び評価を行い,新たな地理空間情報を創出し,Web GISを用いた情報の配信を行うことによって情報を次々と更新・流通させる自律発展型の情報サイクルの仕組みができた。また,GISの空間解析機能を用いた各種評価では,生態学の観点,社会学の観点およびGISの技術的観点から最適なデータモデルを提案した。
その結果,利用者の情報共有が円滑に行われ,各分野の調査・研究が融合されることで,情報の共有だけでなく,意思決定支援のための専門家らによる「知」の共有が可能な環境が創出された。これにより,自然再生計画立案において,生態学,工学,社会学の観点の意見を相互に組み込むことができた。