| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
企画集会 T02-1
里山の利用停滞や管理放棄が,景観や生態系の構造の大きな変容を招いていると指摘されるようになり久しい.とくに,西日本を中心とした竹林の激増に対しては,空中写真判読やリモートセンシングなどの活用による面積拡大の報告や,地形や隣接植生など主に自然的条件との関係などについて解明がなされてきた.一方で,生態学で強く関心となる分布の拡大に係る大型タケ類の生物学的特性や生態系の機能,生物間相互作用に対する竹林拡大の影響などは,未だ十分に調べられていない.また,竹林拡大の引き金となった人間による竹林や里山管理の粗放化の過程やそのメカニズムについても,十分に検討されていない.つまり,「竹林」という生態的かたまりについては,その一面からしか評価されていない状態である.
そこで,本集会の企画者らは,多くの分野にまたがる竹林の研究を蓄積するために,生態学を含む多分野の研究者による集合・竹林景観ネットワークを結成した.ここでは,若手を中心とする研究者が成果を公表しあうことにより,分野間での研究交流を深めることを試みている.さらに,竹林に隣接して暮らしている住民にとっては,現在進行形の問題である.そこで,彼らを巻き込んだネットワークを形成することにより,竹林景観に関する学民間での情報の交流を図り,持続的で現状に即した順応的管理システムの構築を目論んでいる.これらにより,里山景観の保全への研究者のあり方に一つの事例を提示したいと考えている.
本集会では,竹林を対象とした生態学の研究の有用性に着目し,発展途上といえるタケ類に対する生態学の研究を提起したい.これらの研究は,竹林景観の今後を予測するために必要不可欠なものであり,これらの一歩先をいく研究成果を踏まえた上で,現在における竹林の適切な管理手法は何かを探っていきたい.