| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
企画集会 T02-2
有史以前より日本人の生活と密接に関わってきたタケは、食や材として日本の文化を形成してきた。タケの高い商業的価値によって、竹林はこれまで適切に維持、管理されてきたが、近年、竹林が荒廃し問題視されている。竹林は、適度な利用を伴う管理によって健全に維持されるが、利用放棄によって荒廃している。適正な管理に対して技術的に対応するには、竹林の生態系が質的・量的にどのような動態を辿って劣化するかを明らかにする必要がある。これに関する知見を得るためにかつてタケノコ生産が盛んであった大阪府岸和田市をモデルとしてGISやリモートセンシング技術を用いて竹林面積の経年変化を調べた。竹林は岸和田市の中央部に位置する丘陵部や山間部に集中して分布し、総面積は1968年に213.46ha、2002年には484.91haに増加していた。増加速度は、期間によって違いがあり、1987年から1992年にかけてピークを迎え、1992年から2002年には緩やかになっていた。
竹林の拡大が問題視されてから10年以上が経過している。拡大の現状やそのプロセスはわかってきたが、対策を講じるための方策は未だに本質的に解決していない。単純にタケを伐採し、整備するだけでは、景観の劣化など新たな問題を招いている。タケを資源として日常的に利用しているアジア諸国では、日本以上に大面積の竹林があるが、日本のような問題は起きていない。竹林の拡大の問題を解決する糸口は、タケを資源として見直し、時代に即した利用を考えていくか、あるいは本来、モウソウチクやマダケは栽培種であるから、他の樹種などに転換していくしかない。