| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
企画集会 T02-3
近年、竹林の拡大がもたらす景観や生態系への影響が問題視されている。本研究では、竹類の旺盛かつ迅速な拡大を可能にする要因として、地下茎による栄養繁殖で増殖することに焦点を当て、拡大実態をもとにした拡大リスク評価を行った。兵庫県豊岡市を対象に、拡大前(1976年)と拡大後(2007年)間での竹林拡大の動態から、分布拡大に貢献する要因を抽出して空間明示的な拡大予測を行った。解析では地下茎による栄養繁殖の影響を統制するため、拡大前の竹林パッチからの距離をバイアスとして重み付けした上で、物理的環境要因として斜面傾斜角度・斜面曲率・斜面方位・土壌湿度条件・全天日射量を変数とした。結果は、既存の竹林による隣接効果(拡大前の竹林パッチからの距離と隣接サイズ)が支配的であり、物理的環境要因の制約は顕著でなく、広い範囲において拡大可能であった。このように物理的環境要因がほとんど分布拡大の制限要因にならない、竹林のルーズな特性が今日の繁茂につながっていると考えられ、物理的なセーフサイトは限定的であることが示唆された。
さらに、竹類のようなクローナル植物でみられる生理的統合(physiological integration)と呼ばれる、ラメット間で同化産物や栄養塩類などをやりとりする現象について、ササ類を対象に検証を行った研究を紹介し、竹類の高い増殖能力および攪乱耐性について検討する。