| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
企画集会 T05-1
伊豆諸島三宅島は2000年8月から9月にかけて大噴火し、大量の火山灰を放出した。最大の噴火であった8月の噴火の噴煙高度は15kmに達し、山頂には直径1.5km、深さ500mの巨大な新火口が形成された。新火口からの火山灰の放出は2000年以降終息したが,二酸化硫黄を含む火山ガス放出がこれに続いた。2000年から2001年にかけての二酸化硫黄の放出量は、1日あたり48000tonにも達し、その後減少傾向になったが、現在も1日あたり数百トンから数千トンの二酸化硫黄が放出されている。これら一連の噴火活動により島の生態系は多大な影響を受け、三宅島の森林の60%にあたる2500平方kmの森林が強い被害を受けた。また、山頂とその周辺部には、火山灰が堆積した広大な裸地が形成された。噴火は生物種の豊富さにも多大な影響を及ぼした。植物では、山頂部にのみ生育していたハコネコメツツジやウメバチソウなどが三宅島で絶滅した可能性が高く、森林への依存性の高い鳥類であるオーストンヤマガラは、島全体で生息数が半数以下になったと推定されている。一方、噴火後、一定期間後に増加した種も存在する。植物に関しては、これまで三宅島ではほとんど確認されなかったシダ植物であるユノミネシダが二酸化硫黄の高濃度地域を中心に著しく増加した。また、噴火被害林の多くが、ハチジョウススキの草原へと変化しつつある。昆虫については、フタオビミドリトラカミキリ、イズアオドウガネの大発生が確認されている。さらに微生物においては、噴火後に成立した裸地では、化学合成細菌の存在も確認されている。このように三宅島の生物群集はダイナミックな変化をしている。