| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T05-4

植生遷移と火山灰堆積地における土壌の初期生成

*川越みなみ(朝日航洋),上條隆志,田村憲司(筑波大・生命環境)

三宅島の植生は2000年噴火により、多大な影響を受けた。本発表では、噴火後の植生変化の概要および、火山灰堆積により裸地化した地域における植生-土壌系の初期発達過程について述べる。

2001年に島の中腹以下(190-420m)に11ケ所の固定調査区(10×10m)を設置し、2009年まで毎年調査を行った。これら調査地は火口からやや遠く、噴火前の生残個体が多くみられた。2001年には、全面落葉した樹木が胴吹きにより一時的に再生したが、2003年から2004年にかけて、これらの多くは枯死し、多数の枯れ木が生じた。その後、火山ガス耐性があると考えられるユノミネシダ、ハチジョウススキなどの特定の草本種が著しく増加した。

植生-土壌系の初期発達過程を明らかにするために、島西部の中腹以上(379-544m)に3ケ所の固定調査区(10×10m)を2007年に設置した。これらは、火山灰堆積(20-52cm)によりほぼ裸地化した地域にある。植生回復は標高に対応しており、標高379mと443mではハチジョウススキ-オオバヤシャブシ群落であったのに対して、544mでは、ほぼ裸地に近い状態(植被率は5%未満)にあった。植生発達と土壌生成には明瞭な対応関係がみられ、植生が発達した地点ほど、土壌有機質層が厚く、根の侵入が深かった。表層土壌の微細形態についても、裸地に近い調査区では、亜角塊状ペッドからなる構造であったのに対して、ハチジョウススキ−オオバヤシャブシ群落では小粒状ペッドと軟粒ペッドからなる構造が観察された。炭素蓄積については、地上と地下の炭素蓄積量合計値が大きい地点ほど、植物体が占める炭素量の割合が高かった。このことは、植生-土壌系の初期発達過程の炭素蓄積は、植生系が先行することを示しているものと考えられる。


日本生態学会