| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T05-6

三宅島2000年噴火後の鳥類の生息状況と保全上の問題点

*加藤和弘, 樋口広芳(東大・農学生命)

三宅島2000年噴火は、その初期においては火山灰の付着などによる害や、陥没や泥流による生息場所の消滅・破壊といった直接的な形で、島の鳥類に打撃を与えた。その後今日に至るまで火山ガスの噴出が続き、島の植生を損なうとともに、鳥類にも影響を与えている。

噴火直後の三宅島では鳥類相が大きく変化し、一部の個体は近隣の島などに移動していた可能性も示唆されている。その後、植生に大きな変化がない場所では鳥類相も噴火以前の状況にほぼ復帰しているが、植生が退行している場所では鳥類にも影響が認められる。火山ガスの影響を強く受ける場所では、樹木が衰退して草本植物やシダ類が多くなっており、そのような場所からは、コマドリやヤマガラなど樹林性の鳥類種が姿を消し、ホオジロなど草地性の種に置き換わりつつある。さらに、鳥類群集と植生の関係が年を追って変化していることも見逃せない。2006年頃までは、植生の破壊が大きかった場所でもある程度の数の鳥がみられていたが、2008年以降、そのような場所では鳥の数が少なくなっている。その理由はなお未解明であるが、可能性としては、噴火後しばらくの間は枯死木や衰退木で発生する昆虫が鳥類の食物となっていたのが、枯死木の分解や人間による除去などに伴ってこれらの昆虫が減少し、鳥類にも影響が及んだことが考えられる。

三宅島での鳥類の保全を進めるためには、植生の衰退や回復の実態を把握した上で、これらに伴う昆虫や小動物の状態も踏まえた上で鳥類の動向を明らかにする必要があろう。三宅島には、アカコッコ、イイジマムシクイ、ウチヤマセンニュウなど固有性の高い種や亜種が高密度で生息している。現状の適切な把握に基づく対策が急務である。


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