| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
企画集会 T07-1
生物の生息域は,一般に,自然のプロセスあるいは人為的撹乱により,様々な形や大きさに分画・分断され,モザイク状を呈している。特に,近年,道路や森林開発などにより生物の生息域の分断化が急速に進み,その分布や存続に大きな脅威となっている。こうした状況に歯止めをかけ,生物多様性を維持するための一つの方策として,いくつかの保護地域を緑地でつなぐ緑の回廊(コリドー)計画などが進められている。
本講演では,モザイク状の不均質環境として,3種類の規則的な分断環境(帯状分断環境,島状分断環境,コリドー環境),および,それらの規則性を確率的に変動させたランダム分断環境を取り上げ,これらを反応拡散方程式の枠組みの中でモデル化する試みを紹介する。
上記反応拡散モデルの内,帯状分断環境については解析的に解くことができ,伝播速度の一般公式が与えられる。島状分断環境,コリドー環境あるいはランダム分断環境については数値計算により解を求め,新たに侵入した生物がその後どのような空間パターンをとりながら分布域を広げていくか,また,先端の進行速度はモザイク構造に依存してどのように変化するかを明らかにする。
さらに,個体の移動が,ランダム拡散に加えて,より好適な環境へと誘引される移流の効果が加わると上記の結果がどのような影響を受けるかについて検討する。