| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T10-2

生物に適応を迫る土壌プロセス

和穎朗太(農環研)

ボルネオ島の熱帯降雨林タイプは立地条件つまり土壌タイプと対応しており、マクロに見れば、土壌は地形・地質(母材)・風化時間・標高(温度)によって決まっている。この事は、異なる地質・気候等の条件下で生成する土壌の特性に応じて、循環しうる生元素量や物理環境が規定され、それが1つの選択圧となって樹木組成に影響を与えていることを示唆する。よって、土壌を介した生物地球化学プロセスを考慮することで、植生・立地条件の対応関係を、時空間的な広がりを持つ生態系の動態として捉えなおすことができるのではないか。

そのための1ステップとして、ここでは異なる標高傾度、地形面上に分布する熱帯降雨林生態系を例に、標高・母材・地形等の条件が、どの様な土壌プロセスを介して生元素(C, N, P)循環や生態系の構造に影響を与えているかを議論したい。具体的には、先ず土壌風化・貧栄養化と生態系発達の概要を述べ、次に、熱帯降雨林においてリン制限を引き起こす生物地球化学的なメカニズムが、各生態系で卓越する土壌プロセスに応じて異なっている可能性について考えたい。


日本生態学会