| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T10-3

生態系の地上-地下プロファイルに沿ったCNP分布の非対称性からみた低地熱帯降雨林

*今井伸夫(京大・農),Titin J (Forest Research Center, Sabah),北山兼弘(京大・農)

高温多雨のために土壌風化が進んでいる湿潤熱帯では、森林の生産や分解がしばしばPによって制限される。土壌Pは、可給性と有機態無機態の別によって分画でき、多くの研究が熱帯の表層土壌のP画分を調べてきた。しかし、表層土壌だけでなく土壌深部まで含めた各P画分の濃度、細根密度、P無機化速度を指標するリン酸分解酵素活性などの分布と互いの関係性を把握しなければ、植物のP利用可能性を十分には理解できない。また地上部のPについては、生葉・リターに関しては多くの知見があるが地上部P貯留量に関する報告はほとんどない。そこで、熱帯低地林の地上-地下プロファイルに沿ったP分布(およびP分解酵素と細根の分布)を調べた。その際、森林の生産・分解過程においてPと共に重要なCNの貯留量も同時に調べた。

生態系全体のCNP貯留量は、それぞれ315,11,3 t/haであった。Pはその97%が地下部に貯留されており、C(29%)N(83%)に比べてその割合は著しく高かった。可給性の高いP(可給態無機態P+易分解性有機態P)の割合は全Pの約4%で、残りのほとんどが難分解性画分だった。可給性の高いPの6-8割は有機態画分で、土壌深によって濃度に違いはなかった。P分解酵素活性と細根密度は、土壌表層において著しく高かった。このように母岩起源の元素であるPの地上-地下プロファイルに沿った分布(主に土壌に難分解性無機態として存在)は、大気循環プロセスを含むCNのそれ(主に地上部や土壌表層に有機態として分布)とは対照的であった。そして、土壌に一様に分布する低濃度の易分解性Pの中の土壌表層に分布するPが、素早い無機化とroot matによる吸収を通して植物に利用されおり、こうした効率的なP循環がP欠乏土壌上の熱帯降雨林を支えていると考えられた。


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