| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
企画集会 T10-5
「熱帯降雨林」と一言で表現されるバイオームには、種組成の異なる多様な植生が存在し、そこにおける一次生産や栄養塩循環も様々である。
Vitousek (1984)は、熱帯降雨林のリン利用効率(Phosphorus use efficiency)が、温帯や他の植生帯よりも高いことを示しているが、どのようなタイプの熱帯林がどのような値のリン利用効率を持つのかは現時点でも明らかではない。そこで、私たちは、ボルネオ島全域の多地点のデータを解析し、熱帯降雨林のリン利用効率について再検討してみた。
その結果、ボルネオ島という赤道直下の限られた範囲で似たような気候帯に属するにも関わらず、この地域の熱帯林のリン利用効率は実に幅広い値を持つことが明らかとなった。これには、土壌の栄養塩可給性と種組成の両方の空間変異が強く関係していると思われる。
本講演では、ボルネオ島の様々な植生のリン利用効率のデータを提示するとともに、リン利用効率に関わるメカニズムである再吸収率(resorption rate)やリン生産性(phosphorus productivity)についても紹介し議論したいと思う。