| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
企画集会 T11-5
植物の遺伝構造は過去の気候変動や地形変化に伴う分布の変遷と密接に関連している。また遺伝構造は植物の生態的特性とも密接に関連し、花粉媒介者、種子散布形態、交配様式、繁殖様式、世代時間などの違いによって遺伝構造は大きく異なる。本発表では、三宅島の治山緑化のために調査した植物の遺伝構造などを事例として議論を行う。自然の状態において火山噴火による撹乱を受けた地域に優先して侵入すると考えられる3つの植物種、ハチジョウイタドリ(Polygonum cuspidatum var. terminalis )、ハチジョウススキ(Miscanthus condensatus )、オオバヤシャブシ(Alnus sieboldiana )を材料として伊豆半島及び伊豆諸島から集団サンプルを収集した。遺伝的解析は母性遺伝する葉緑体DNAの種内多型とAFLP(Amplified Fragment Length Polymorphism)法を用いて行った。その結果、葉緑体DNAでは、伊豆半島や大島などで多型性は高いものの、特定の島で固有のハプロタイプが存在していた。このことはかなり古い時代に移住した少数の個体が遺伝的浮動やその後の遺伝的隔離によって現在の遺伝構造が形成されたことを示唆している。一方、核DNAのAFLP解析結果では集団間の遺伝的分化程度は4.15%〜16.78%と種によって大きく異なった。しかし葉緑体DNA多型の結果と比べると島間の遺伝的分化程度は低く、現在でも花粉による遺伝子の交流が起こっていることが示唆された。このように種の生態的特性によって遺伝構造は異なるが、伊豆半島と伊豆諸島では調査した種では半島部や大島で遺伝的多様性が高く、八丈島などの南の島では遺伝的多様性が引くい傾向が見られた。