| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T13-2

遺伝的多様性からみるホトケドジョウの生息状況と個体群保全

相木寛史(日大・院・生物資源)

ホトケドジョウは東北地方から近畿地方にかけての谷戸の細流に生息する以前は普通に見られた種であったが、近年の圃場整備や宅地開発などに伴い、本種の生息地は孤立や分断化が進行しており、遺伝的多様性の低下が懸念されている。そこで本種の遺伝的多様性の現状把握および遺伝的多様性に及ぼす影響要因を明らかにする事を目的として、生息環境要因として本種の生息地サイズや個体群サイズに着目し、両要因が本種の局所個体群における遺伝的多様性に及ぼす影響について検討を行った。調査は東京都および神奈川県を流れる鶴見川水系14地点をモデル地域として実施した。2008年もしくは2009年春季の産卵期前に標識採捕法により生息尾数推定を行い、調査で得られた計446尾についてマイクロサテライト8遺伝子座を解析した。それらの結果を基に生息地点間の遺伝的多様性を比較すると同時に、個体群サイズや生息地サイズとの関係について検討を行った。調査地点の生息地サイズは62-1447m2、各地点の推定生息尾数は28-1503尾であり、平均アリル数は3.4-12.0、平均ヘテロ接合度は0.61-0.82であった。他の生息地と河川を介して移動が可能な生息地は孤立した地点よりも高い遺伝的多様性を示し、生息地点間の水域ネットワークの重要性が示唆された。また孤立した生息地では遺伝的多様性と生息地サイズ・推定生息尾数の間に有意な相関関係が認められたことから、本種の遺伝的多様性と生息地や個体群サイズが密接に関係していることが明らかとなった。

本報告では、これまでに得られた結果を基に個体群の遺伝的多様性の維持が可能な保全について提言を行う。


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