森林生態系の種構成や現存量，地上部純一次生産量などの生態系機能は地域によって異なる．また，自然または人為攪乱の影響を受けた二次林，施業履歴の異なる人工林をも考慮すると，森林生態系の構造は天然林と異なる．同時に近年の気候変動にともない，これまでとは違ったパターンを示す可能性が予想されている．これらの違いは「生態系サービス」の「質」の違いに大きく反映する．生態系サービスのなかに，森林生態系機能の一つの特徴である炭素固定能がある．これは近年の森林減少や温暖対策の検討の話題のなかで取り上げられる事が多い．そこで本発表では，森林の「質」としての炭素量と炭素固定能に着目した．様々な森林生態系の「質」を広域でみた場合，何が森林の「質」の指標になりうるのだろうか．ここではモンスーンアジア気候にあり，多様な植生が分布している赤道熱帯からシベリアまでの東アジア北半球の，天然林，二次林，施業林を対象に，森林の「質」を図る指標を検出する取り組みについて議論したい．今回の発表ではPlotNetと呼ばれる森林調査区のデータベースを利用した．データは発表者を含む研究者の情報や既報の研究発表などの情報を集約している．この発表では，同じ地域や植生帯での，天然林，二次林，施業林間での，森林生態系の炭素量と炭素固定能の比較を行ない，植生帯や森林のタイプ間で違いが生じるメカニズムについての議論を行なう．また，これらから森林の「質」を決める要因についても議論を行なう予定である．