| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T16-3

温暖化の植物フェノロジーへの影響:マクロ生態学的アプローチ

土居秀幸(Carl-von-Ossietzky University Oldenburg)

近年、今まで蓄積されてきた長期データを使用した研究により、地球温暖化が植物・動物のフェノロジーのタイミングに、大きな影響を与えていることが明らかとなってきた。今までの研究では、ある場所でのフェノロジーの温暖化への応答を検討している場合が多くで、そのマクロ的な傾向について検討した研究例は未だに少ない。地球規模で起こる気候変動とフェノロジーの関係を明らかにするためには、大空間スケールでの生態学的現象を扱うマクロ生態学的な視点が重要である。しかし、マクロ生態学で注目されている緯度クラインや大空間スケールでの現象のばらつきをフェノロジーに関して考察した研究例は非常に限られている。

気象庁では、1953年から現在まで全国102カ所の観測所で、のべ120種以上の植物・動物種についてその開花・発芽・落葉・初見日・初鳴日などのフェノロジーを記録している。全国102カ所という広範囲で長期に観測されたフェノロジーデータを用いれば、フェノロジーの温暖化への応答をマクロ生態学の視点から考えることが可能である。

本講演では、気象庁・生物季節データセットを用いたマクロスケールおけるフェノロジーと気候変動の関係についての研究を紹介する。特にフェノロジー応答や展葉期間・応答の緯度クラインと、気温へのフェノロジー応答の地域同調性に対する遺伝的多様性の影響について紹介する。まとめとして、今後のマクロスケールでのフェノロジー研究の意義と方向性について述べる。

参考:Doi and Takahashi (2008) Global Ecology and Biogeography 17:556-561., Doi et al. (2010) Global Change Biology 16:373-379., 土居・高橋(2010) 日本生態学会誌 印刷中


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