| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T18-3

あなたの知らない付着性淡水二枚貝の脅威

富永篤(環境研)・伊藤健二(農環研)・木村妙子(三重大院・生物資源)

外来生物の侵入は、侵入先でハビタットの破壊、生物多様性の消失、在来種の絶滅、多大な経済的損失をもたらすとされている。近年、船舶の航行や水産物の国際取引に伴い、水域の生態系に対する外来生物の影響が大きな問題となっている。淡水域では、付着性淡水二枚貝であるカワホトトギスガイとカワヒバリガイの被害が世界的に広がっており、北米や欧州には前者が、日本、台湾、香港、南米などには後者がすでに侵入している。これらの付着性淡水二枚貝は大量発生に伴う在来生態系の激変、大量死に伴う水質悪化、利水施設での大量発生に伴う通水障害などを引き起こすことが知られている。試算によると、黒海周辺が原産のカワホトトギスガイが北米に侵入したことで北米の電力施設、利水施設の36%が本種による経済的被害を受け、侵入初期の1989年から2004年までの経済的コストは2億4600万ドルにも達するとされている。カワホトトギスガイとよく似た生態を持ち、より広い環境条件でも生息可能なカワヒバリガイについてもこのまま放置すれば、同等もしくはそれ以上の被害が生じる恐れもあり、日本国内でも早急な対策が求められている。朝鮮半島と中国が原産の本種は、1980年代後半ごろに関西や中部地方に侵入し、現在は関東地方まで分布を拡大していることが知られているが、これまでのところ本種に関する生態的、経済的な被害の実態把握はあまり行われてきておらず、また国内への侵入プロセスや分布拡大プロセスについても推測の域を出なかった。本発表では、これら付着性淡水二枚貝に関して予想されうるリスクを紹介するとともに、分子遺伝学的手法をよって裏付けられた本種の分布拡大プロセスを説明し、考えられる本種の防除対策について議論を行いたい。


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