| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T28-4

複数の塩基配列データに基づくマイマイカブリの系統地理

*長太伸章(京都大・理),曽田貞滋(京都大・理)

日本列島の複雑な地史は山地や河川などの様々な地理的障壁を生み出し、多くの生物における地域間分化や異所的種分化に貢献している。日本に生息する昆虫においても、多くの種で地史に影響されたと考えられる地域分化が見られるが、特に飛翔できない地表性の甲虫ではその影響が顕著であり、地域分化や種分化が非常に多く見られる。マイマイカブリDamaster blaptoidesは日本固有の大型の地表性甲虫で、幼虫期にカタツムリを専食する。本種は北海道から屋久島まで広く分布するが、採餌戦略と関連した頭部形態の分化をはじめ、形態に様々な地域分化が見られる。そこで本種の形態分化の歴史的過程とそれに影響した地形・地史の影響を評価するため、分子系統地理解析を行った。

これまで昆虫を対象に行われてきた系統地理研究の大部分ではオルガネラDNAであるミトコンドリアDNAが使われてきた。しかし、分子系統地理解析においてもミトコンドリアDNAなどの1連鎖群のみの解析では正確性に様々な問題があるとの報告が近年なされており、分子系統地理解析においてもより正確な解析のためには独立した複数の連鎖群の遺伝子を解析するべきとの指摘がある。そこで本研究ではミトコンドリアDNAに加え複数の核DNAについて塩基配列を決定し、解析に用いた。本発表では複数の遺伝子の塩基配列データに基づいたマイマイカブリの分子系統地理解析の結果を紹介すると共に、ミトコンドリアDNAと核遺伝子の解析結果の比較などから分子系統地理解析における核遺伝子の塩基配列データの有効性についても議論する。


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