| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) B1-02
レブンアツモリソウは礼文島に産する絶滅危惧植物で、過去の盗掘により個体数は減少したが、現在は保護区の設置、監視活動により保護されている。2002年より鉄府保護区や礼文島南部の小集団で、永久方形区を設けて全個体をマッピングし、保全の基盤となる個体群動態の調査を行ってきた。その結果、個体群増殖率の低下傾向は強まり、特に実生や小型の非繁殖個体の減少が著しかった。このような衰退の原因として、土留めなどで土砂が安定したため撹乱が減り、実生の発生に適すると考えられる半裸地が減少したこと、ササやススキの高茎草本が侵入して被陰が強まったこと、近年の早い雪解けとそれに続く春の乾燥、遅霜により耐性の少ない小型個体が重篤な影響を受けたこと、が考えられた。
今回、鉄府保護区内で、ススキに覆われるレブンアツモリソウ群落を用いて、2008年からススキの刈り取りによる光環境改善試験を試みた。その結果、2/3刈り取り区で非開花ステージから開花ステージへ移行したものが対照区の1.3倍になった。また、結果率は1/3,2/3刈り込み区でも対照区より増加が認められた。一方、新たな実生の出現は認められなかった。以上の結果から、高茎草本の刈り取りにより光環境を改善してやれば、開花数が増えるとともに、また、ハチの訪花頻度が上がるか、光合成量が増えることで養分を種子生産に共有できることで結果率が上がることが期待される。しかし、2年程度ではあらたな実生の発生には効果がないことが明らかになった。