| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) B1-03

絶滅危惧植物ハナシノブにおける結実率の個体群間の変異を決める要因

横川昌史(京都大院・農),安部哲人(森林総研・九州),井鷺裕司(京都大院・農)

植物の繁殖成功は送粉や資源など様々な要因によって制限されている。個体群の存続性は繁殖成功の影響を強く受けるため、繁殖成功の変異を決める要因を明らかにすることは絶滅危惧植物の存続性を予測する上で重要である。本研究では阿蘇地方に固有の草原性絶滅危惧植物であるハナシノブ Polemonium kiushianum の結果率と訪花昆虫相を複数の個体群(野生4個体群、復元3個体群)において評価した。

ハナシノブの結果率は個体群間で大きく変異した。他家花粉添加実験によって、ほとんどすべての個体群において花粉制限があり、その大きさは集団間で異なることが明らかになった。また、ハナシノブの主な訪花昆虫は、小型ハナバチ類・マルハナバチ類・ハナアブ類で、これらの訪花頻度は集団間で大きく異なっていた。

訪花頻度と個体サイズを説明変数、結果率を目的変数として一般化線形混合モデルで解析した結果、訪花頻度と個体サイズは結果率に正の効果を与えていた。訪花昆虫のタイプ別に同様の解析した結果、小型ハナバチ類とマルハナバチ類の訪花頻度が結果率に正の効果を与えており、予測モデルはマルハナバチ類の訪花頻度に強く応答した。この結果は、マルハナバチ類が特に有効な送粉者であることを示唆している。また、訪花昆虫の観察を行った個体の周囲のハナシノブの開花密度・他種個体の開花密度・他種の開花種数を説明変数、訪花頻度を目的変数として一般化線形混合モデルを用いて解析した結果、ハナシノブの開花密度が訪花頻度に正の効果を与えていた。保全への示唆として、花粉制限とマルハナバチ類の送粉の有効性から、訪花昆虫(特にマルハナバチ類)の生息環境の維持が重要だと考えられた。また、ハナシノブの開花密度の大きさは訪花昆虫の誘因に効果的であるため、個体群サイズの維持が種子生産を促進すると考えられた。


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