| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) H1-04

湖底に堆積する動物プランクトン遺骸(ミジンコ休眠卵鞘)の遺伝解析手法の開発

石田聖二 東北大IAREO (*), 大槻朝 東北大生命, 陶山佳久 東北大農, 占部城太郎 東北大生命

過去の湖沼の水質や生物種に関する知見は、水質改善などの具体的な施策を講じる上で不可欠である。一部の湖沼では水質や生物種などの定期的な調査がなされているが、ほとんどの湖沼では未調査である。未調査の湖沼でも、底泥に堆積している化学物質や生物遺骸を調べれば環境の変遷を推定できる。特にミジンコ(Daphnia)の休眠卵は湖沼環境の変遷を解き明かすツールとして有効である。アオコの大量発生や富栄養化などの環境変動が生じると、その湖沼にすむミジンコが敏感に反応して、ミジンコ休眠卵の遺伝的組成が大きく様変わりする。ただし休眠卵からの孵化率の高い湖沼では、解析に用いるミジンコ休眠卵を入手できず、この研究手法を利用できない。そこで本研究では、休眠卵が孵化しても休眠卵を包む卵鞘は底泥に残ることに着目し、その卵鞘からDNAを抽出して解析する技術を開発した。湖沼底泥に堆積している卵鞘のDNAは微量で断片化されていると想定されるため、DNA抽出方法と増幅方法の両方を工夫をした。この結果、底泥より採集した卵鞘のうち7割程度を遺伝解析することに成功した。この新しい研究手法により、湖底に堆積した休眠卵からの孵化率の大小に関わらず、ミジンコの個体群構造を再現することが出来る。


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