| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-027
クローナル植物の個体群の挙動は、個体群を構成するgenetが単一か複数かで、異なると予想され、議論が続いている。そこで、genet構成が異なる人工個体群間に収量の差があるか否かを栽培実験により検討した。
2010年3月に、東京都府中市多摩川河川敷にて、異なる4つのgenetからイタドリの地下茎を採集した。十分に給水させ、10cmの長さに切りそろえた地下茎を、生重量の測定後に、50cm×50cm×15cmの容器に植栽した。2段階の地下茎密度(4本・8本)と3種のgenet構成(容器内すべての地下茎が同一のgenet・2つのgenet・4つのgenet)の計6処理を、16反復設定した。栽培容器は、乱塊法に則り、ビニールハウス内に配置した。すべての葉が枯れた2010年12月に7反復分について、地上茎と地下茎を、栽培容器を単位として収穫し、乾燥重量を求めた。
植栽時には、同じ密度であれば、栽培容器当たりの地下茎の総生重量には、genet構成による有意な差は認められなかった。収穫時の地上茎の乾燥重量には、密度・genet構成の間で有意な差は検出されなかった。また、栽培開始時の地下茎の生重量と地上茎の間にも、明瞭な相関は認められなかった。密度が異なると、刈取り時の地下茎乾燥重量に有意な差が見られた。しかし、同じ密度では、地下茎の乾燥重量には、genet構成間で明瞭な差は検出されなかった。一方で、栽培開始時の地下茎の総生重量と地下茎の乾燥重量は、容器内の地下茎がすべて同一のgenetだと、正に相関する傾向が認められた。
以上より、イタドリ個体群を構成するgenetが単一か複数かで収量に顕著な違いは認められなかった。しかし、個体群のgenet構成により、個体群の成長様式には差がある可能性が示唆された。