| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-048
植物の性表現は複雑であり、雌花、雄花、両性花の多様な組み合わせが見られる。不完全雌雄異株植物種は被子植物の約3%を占めている。不完全雌雄異株植物が存在する理由としては、光・土壌条件、資源配分、植食性昆虫の影響、送粉者の誘引効果などを含めた生育環境に適応するための繁殖戦略だと考えられている。そのため、複雑な性表現の意義を解明することは、その植物の繁殖戦略に影響を与える様々な内的・外的要因や送粉者などとの生物間相互作用の理解だけでなく、性表現の起源に示唆を与えるものである。そこで、まずは雌性繁殖に注目し、主に照葉樹林帯の二次林から極相林まで広く分布する不完全雌雄異株低木ヒサカキを材料に、雌性繁殖成功度を両性個体と雌個体で比較した。
調査は、名古屋大学の東山キャンパスに広がる二次林の3集団を用いて、2010年2~12月に実施した。自然状態での観察とともに強制他家授粉処理を実施し、両性個体と雌個体における果実生産(結果率や果実重など)と花粉制限の有無を調べた。また、送粉者の観察、対象個体の光環境とサイズの測定を行った。その結果、送粉者は主にタマバエ類であること、花粉制限が存在すること、果実生産に対する資源制限は弱いことが明らかとなった。結果率や果実重については、自然状態と強制他家授粉処理とも、雌個体の値が両性個体のものより高かった。以上より、雌個体は両性個体より雌性繁殖のが高いことが示唆された。