| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-053
植物の多くは、花が開花したら、その花期が終わるまで開いたままである。しかし一方で、周囲の温度が下がったり光環境が悪くなったりした場合や、体内時計によって開花期間中に花を開閉させるものがある。このような『花の開閉運動』という形質はどのような環境下で適応的で、いかなる利益をもたらすのだろうか。
本研究では、リンドウ科のエゾリンドウを用いて、花の開閉運動がどのような利益をもたらすのかを調べた。エゾリンドウも花が開閉する種の1つで、夜間や天候が悪い日など、気温が低い環境下では花を閉じることが分かっている。このような特徴を利用して、花が自由に開閉できないように花弁を開いたまま固定することで、自由に開閉できるコントロール個体と比べてどのような不利益があるのかを調べる実験を行った。繁殖成功として種子生産を計測することとした。花弁を固定した個体と未固定の個体の繁殖成功の比較を、自然訪花・人工授粉の2処理それぞれに行った。
その結果、自然訪花・人工授粉の両方において、花弁の固定の有無による生産種子数の有意な差が見られなかった。同様に、生産種子重についても固定の有無による差は見られなかった。人工授粉のものは自然訪花のものと比べて種子重・種子数ともに有意に多かったが、平均種子重も4処理で差がなかった。このように種子生産には花の固定の有無による影響は見られなかったので、少なくとも雌成功には花の開閉運動が寄与していないことがわかった。
今後は、雄成功・夜間のポリネーションの検証を進める予定である。