| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-066
ある植物の花形質からその種の主要な送粉者を予測し、対応付ける手法には2つが考えられる。1)花形質に対する各送粉者の行動的反応を特に考慮せずに、花形質と訪花した昆虫のパタンを多変量解析によって対応付ける帰納的アプローチ、2)各送粉者ごとに花形質の選択にかかる行動的メカニズムを明らかにし、それをもとに送粉者の訪花パタンを予測する演繹的アプローチである。本研究は花の反射スペクトルと昆虫の色覚から、送粉者ごとの色の見え方を予測し、さまざまな反射スペクトルを呈する花への主要な送粉者の訪花パタンを予測した。さらに、特定の送粉者による訪花が期待される各送粉シンドロームを呈するスペシャリストな植物に対する訪花パタンに限定することなく、ジェネラリストな植物に対する複数の送粉者による訪花パタンの予測をも試みた。
調査は2010年に主に東邦大学のキャンパス内で行い、園芸植物も含んだ対象植物種(約46種)に訪花した昆虫を送粉タイプごとにカテゴリー分けして記録した。植物の花形質として花弁色と形態を用いた。花弁色はスペクトロメータを用いて波長ごとの光の反射率を測定し、反射率と錐体細胞感度を考慮して各送粉者ごとに色空間内に位置づけた。花形態は送粉様式でカテゴリー分けを行った。その後、花形質を説明変数として、訪花頻度を予測するモデルを各送粉者ごとに作成した。このモデルを用いて、植物種ごとにそれぞれの送粉者の訪花頻度の予測値を計算し、花形質と送粉者の訪花パタンとの関係を解析した。
その結果、スペシャリストな植物のみでなく、複数の送粉者によって送粉されるジェネラリストな植物の予測も可能であることが示唆された。今後、今回対象とした種以外の植物種に本研究で作成したモデルを適用し、予測の精度をテストすることでモデルの妥当性を評価する必要がある。