| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-254
多くの亜社会性昆虫では片親だけが子の世話をするが、両親で子の世話をする昆虫はモンシデムシ類、クロツヤムシ類、ナガキクイムシ類、フンチュウ類などで知られているだけである。モンシデムシ属では、両親が小型脊椎動物の死体を子供の餌として利用し、捕食者や他の腐食者から子供や資源を防衛する。また親は防衛以外にも、資源処理や幼虫への給餌を行う。しかし、雄の給餌量は雌よりもはるかに少なく、孵化幼虫到着後に雄を取り除いても雌の給餌量は変化しないことが報告されている。したがって、雄が給餌に参加する意義は不明な点が多い。そこで本研究では、ヨツボシモンシデムシを材料として、雄が給餌に参加する場合と参加しない場合で雌雄の給餌期の行動を定量的に測定し、雄が給餌に参加する意義を検討した。飼育容器に繁殖資源として鶏肉を設置し、ヨツボシモンシデムシの雌雄ペアを放し繁殖させた。孵化幼虫に給餌を開始してから幼虫が蛹化のために分散するまで、ビデオカメラで毎日1時間給餌行動を撮影した。その結果、雄の給餌時間は雌の給餌時間より短かったが、雄が給餌に参加した場合、雄が給餌に参加しなかった場合より雌の給餌時間は給餌開始から3日目にかけて短かった。また、他のモンシデムシ類より雄の給餌量が多い傾向がみられ、雄の給餌は幼虫の生存・成長に大きく貢献していた。給餌への参加が必要か否かを資源量や幼虫数によって判断ができない場合、雄は雌の給餌能力が低い時に給餌に参加する可能性が示唆され、雄の給餌への参加は固定的な繁殖様式ではないことが判明した。