| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-260
様々な昆虫は、化学物質を用いた個体間コミュニケーション能力を発達させている。個体が捕食リスクにさらされたときに放出する警報フェロモンは、様々な昆虫で捕食リスクを軽減する行動や形態を誘導する。これまで警報フェロモンについてはアリやハチなどの社会性昆虫やアブラムシで盛んに研究されており、その機能や物質の特定が行われてきた。本発表では、真社会性アブラムシのササコナフキツノアブラムシが警報フェロモンをもち、その応答と送信能力にカスト内・カスト間変異があることを報告する。
ササコナフキツノアブラムシは、防衛を専門に行う不妊の兵隊カストを2次寄主上で産出する真社会性アブラムシである。本種の生殖個体は、捕食者と接触すると角状管から液滴を放出することがある。この液滴を生殖個体や兵隊個体に与えたところ、生殖個体は口吻を寄主植物から抜き、液滴から離れる行動を見せた。一方で兵隊個体は、液滴に対し防衛行動を示した。さらに、液滴を付着させた捕食者と液滴を付着させていない捕食者に対する兵隊の防衛行動を比べたところ、液滴を付着させた捕食者は兵隊個体に激しく攻撃されることがわかった。これらの結果は、角状管から放出される液滴が警報フェロモンとしての機能をもち、警報フェロモンに対する応答にカスト間で変異があることを示している。さらに、兵隊個体と生殖1齢個体は、液滴を放出するための角状管を欠いており、カスト内・カスト間に警報フェロモンの送信能力に違いがあることが明らかになった。