| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-263
性比調節には、自らの戦略だけでなく、集団内の他個体の戦略も影響するため、個体間の駆け引きの進化を考える上で好適な問題である。実際に子を産むのは雌であるため、集団全体にとっては雌偏向性比が有利であるが、そのような集団では雄を多めに産む個体が有利となるため、雌偏向性比が進化することはない。しかし、局所的集団内で交配を行う生物は、集団内で繁殖する雌が少なく、競争相手が少なくなるに従い、雌に偏った性比が進化的に安定になることが確認されている(局所的配偶競争(LMC)理論;Hamilton 1967)。このとき、競争相手の雌が他に繁殖している場合であっても、お互いの性比を監視し合える状況であれば、お互いにとって有利となる協力的雌偏向性比が進化する可能性が考えられる(Kamimura et al. 2008)。
Melittobiaは、同じ寄主から羽化した個体どうしで局所的に交尾を行う寄生バチである。LMC理論の予測に反し、繁殖集団となる寄主に産卵する雌数に寄らず、一定して極端な雌偏向性比(雄率1-5%)を示す。さらに、本寄生バチでは、複数の雌が長期間同一寄主に産卵を続ける。このため、この極端な雌偏向性比が協力的性比によって説明されるのかを検証するため、雄を多めに産む裏切り性比に対し、他の雌も裏切り返して雄を多めに産むのかについて検討した。放射線を照射した雄と交尾させ、雄を多めに産むように調節された雌と、通常の雌を同じ寄主に産卵させ、各雌の産んだ性比をマイクロサテライトマーカーによって測定した。その結果、これまでのところ、通常雌が裏切り返し、雄を多めに産むという証拠は得られていない。本種の繁殖構造や性比認識能力、雌偏向性比の関係について考察する。