| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-271

伊豆大島における二次林の種組成と保全の必要性

*落合はるな(明治大・農), 倉本宣(明治大・農)

伊豆諸島の落葉・常緑広葉樹混交林二次林の研究は関東地方のコナラ林に代表される落葉広葉樹二次林より少なく、保全管理を行う価値を検討するための情報が十分でない。そこで本研究では、伊豆大島における二次林の種組成を把握するための調査を実施し、遷移の進行途上にある島内の二次林の特徴を理解して保全の必要性についての情報を得ることを目的とした。

奥富ら(1976)発行の現存植生図(25000分の1)において伊豆大島の代表的な二次林である「オオシマザクラ-シロダモ群落」と分類されている二次林から、3ヶ所の調査地点を設定した。各調査地点の林分に10m×10mの方形区を設置し、方形区をさらに1m×1mのグリッド100個に分割し、各グリッドにおいて、高木層および亜高木層の樹木の胸高直径、草本層の樹木の自然高、相対光量子束密度を記録した。

方形区全体で合計14種が出現し、3調査地を平均すると65本/aの高木類が認められた。稚樹の定義を胸高直径5cm以下、高さが30cm以上とし、確認された稚樹全種と各種高木の分布位置の関係についてχ²検定により解析した結果、特にヤブツバキについて稚樹全種との分布位置に強い正の関連性があることが分かった(P<0.001)。

ヤブツバキが存在する林分は、現在稚樹が確認されているシロダモ、ヤブニッケイが成長し、常緑広葉樹林に遷移すると考えられる。また現在スダジイが残存している林分は、萌芽や実生が少なく、スダジイが優占する極相林に遷移するまでには年数がかかるものと推定される。今後は、自然林への遷移を進めるか、管理を行って今まで人々に親しまれてきた植生を維持するか等の方針を、景観や生物多様性などの観点も入れて検討し、管理の方針を確立していくことが望ましい。


日本生態学会