| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-273
自動撮影カメラは非侵略的な調査手法であり、近年の哺乳類調査に用いられるようになってきた。少ない努力量で、複数の地点において昼夜問わず調査努力量を均一にできるなどモニタリングする上で優れている点は多い。本研究では22台のカメラを用いて京都府から滋賀県にかけての哺乳類生息調査を行った。
カメラは大津市、甲賀市、長岡京市、宇治市で、それぞれ5×5kmの区画の中に約1km間隔でカメラを設置した。誘引餌(ドッグフード)の影響を把握するため、大津市、甲賀市、長岡京市には誘引餌なしで設置した後、カメラの前に誘引餌を置いた調査を行った。また季節の影響を調査するために、大津市では春と夏の2回、同一区画に設置した。
全調査を通して、5目9科12種の哺乳類が撮影された。シカとタヌキが撮影された区画の割合が高く、シカで61%、タヌキで52%であった。ついでイノシシ(45%)、テン(38%)の順で、この4種は調査地に広く分布しているといえる 本調査で検出された外来種は、アライグマ、ハクビシン、チョウセンイタチであった。アライグマはすべての調査地で、チョウセンイタチは甲賀のみで検出された。長岡京ではハクビシンやアライグマといった外来種が撮影された区画の割合が高かった。哺乳類の分布とカメラを設置した周辺の植生との関係をGISによって解析した結果、森林の面積が多い区画ほど種数が多い傾向にあった。アライグマは広葉樹林と水田の割合が高い区画で検出され、テンやイノシシも広葉樹林を選好する傾向にあった。
誘引餌の効果があった種はタヌキやテンで、誘引餌の設置により検出されるまでに要する日数が減少した。一方で、シカには誘引効果がなかった。季節の影響は、撮影された区画の種構成や活動時間に大きな差がなかったが、カメラの撮影日数は夏より春が大きかった。